タイトル

タイトル

6.04.2014

第5回ゼミ

2014年5月14日

 私たちのゼミでは、廣野由美子『批評理論入門『フランケンシュタイン』解剖講義』(中公新書)を用いて、文学批評について学んでいます。ゼミの内容や議論も回を追うごとに難しくなり、白熱した議論を先生に見守られながら行っています。

 今回のゼミでは、廣野由美子『批評理論入門『フランケンシュタイン』解剖講義』(中公新書)第1部の7「性格描写」と8「アイロニー」の発表を行いました。
主に議論になったことを中心にまとめたいと思います。




以下レジュメの内容(6月23日に訂正)

『批判理論入門』(第4回)

7.性格描写
☆キーワード
・キャラクター:文学作品の登場人物、登場人物の特性や行動様式のこと。

☆人物紹介
EMフォースター(18791970
 (Edward Morgan Forster) 
 イギリスの小説家。主な著作は『インドへの道』『小説の諸相』

・ジェイン・オースティン(17751817
 (Jane Austen
   イギリスの小説家。主な著作は『分別と多感』『自負と偏見』など。
 
☆語彙
・平板な人物:小説中の定型的な,時に漫画的な登場人物。
・立体的な人物:その人格,背景,動機などが十分に記述された,小説中の登
                場人物。
(Japan Knowledge Lib『ランダムハウス英和大辞典』より引用)

☆章の要点
・イギリスにおける性格描写の重要性

・フランケンシュタインの性格
 ・とどまることない探究心
 ・英雄的行為に憧れのぼせ上がりやすい気質
 ・自分の能力への自信と野心
 ・激しやすく孤立しがちな傾向。
 →これらの性格が道を外す結果となる。

・他者との比較により浮かび上がる性格
エリザベスとフランケンシュタイン
エリザベス                フランケンシュタイン
落ち着いていて集中力がある         熱中癖・激しい知識欲
自然を満ち足りた心で眺め、楽しむ      自然原因の究明への無上の喜び

クラヴァルとフランケンシュタイン
クラヴァル                               フランケンシュタイン
偉業に対する情熱
人間の行為や美徳への関心         自然科学的な秘密への関心

エリザベスとの関係からの影響

思いやりや寛容な性質           気性の激しさの抑制




8.アイロニー
☆キーワード
・アイロニー:見かけと現実との相違が認識されること、また、そこから生じる皮肉のこと。

☆語彙
・修辞:言葉を美しく巧みに用いて効果的に表現すること。また、その技術。   
    レトリック。
・直喩:「ようだ」「ごとし」「似たり」などの語を用いて、二つの事物を直接に 
    比較して示すもの。「雪のような肌」など。
・隠喩:「…のようだ」「…のごとし」などの形を用いず、そのものの特徴を直 
    接他のもので表現する方法。「金は力なり」など。
                      (『デジタル大辞泉』より引用。)

☆章の要点
・言葉のアイロニー:表面上述べられていることとは違う意味を読み取らせよ 
          うとする修辞的表現。
 EX.
 老人「何かの形で人の役に立つことができれば」
 →怪物は「人」の範疇から除外された存在であり、言葉のアイロニーが生じ 
  ている。

・状況のアイロニー:意図や予想されたことと、実際に起きていることとの間
          に相違がある場合のこと。
 EX.
 ウォルトンが姉に宛てた第三の手紙と第四の手紙の連続した配置。
 →第三の手紙と第四の手紙とでは調子が変化しており、その対照的な手紙が 
  連続して配置されることで、状況のアイロニーが生じている。




・劇的アイロニー:ある状況に関する事実と、その状況についての登場人物の
         認識が一致していないことに、読者が気づく場合に生じる
         アイロニーのこと。
 
EX.
 婚礼の日の夜のフランケンシュタインの認識のズレた行動。
 →エリザベスの身の危険を心配するべきなのだが、フランケンシュタインは 
  エリザベスから別室に行かせて目を離すという認識のズレた行動をし、
  そのことに読者が気づくことにより劇的アイロニーが生じる。

・小説の構造によるアイロニー:信頼できない語り手の使用などによって、小
               説の構造を通してアイロニーを生み出す。




7の「性格描写」では、性格がすべてを引き起こす要因になるのか、ということを考え
その際に、ルネ・ジラールの「欲望の三角形」の話がでてきました。

「欲望の三角形」とは、仮にAとBとCという人がいて、CはAを好きだとする。そしてBもAを好きになった場合に、BはCという存在が居ることでよりAに惹かれる。(CのAに対する好意を模倣して、BはAに好意を抱く。)
確かに、自分がこんな性格だと思っていても他者との関係の中で自分の意志と違う方向に行ってしまうこともあり、性格がすべてを決定するわけではない、という考えになりました。


8の「アイロニー」では隠喩(メタファー)に加え、換喩(メトニミー)について学びました。
メトニミー意味は「例えるものが例えられるものを全体とした時の一部の関係になっている。」
例として「赤ずきんちゃん」が挙げられました。
「赤ずきんちゃん」は「赤のずきん」という一部だけで「赤ずきんちゃん」全体を表しているため、メトニミーと言えます。

今回のゼミでも様々なことを議論したのですが、これからの授業を通して考えていく課題が出てきました。
それは情報の出所が多数化していれば立体的な人物になるか。」ということです。
普通は情報の出所が多ければ多いほど良いと思いますが、本当にそうなのかを考えていきたいと思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿