タイトル

タイトル

11.07.2015

秋学期 特別講義

秋学期特別講義 井川理先生
                                               文責 日高華英

【メディアの中の「江戸川乱歩」 ―『陰獣』を中心に―】


10月22日(木)6限に井川理先生による特別講義を行いました。

取り扱った作品は江戸川乱歩の「陰獣」です。

《1》 1930年前後のメディアにおける「江戸川乱歩」と『陰獣』

○乱歩の作家的イメージと『陰獣』広告の変遷
 …『陰獣』の新聞広告など多数の資料をもとに、当時の人びとには、『陰獣』という作品がどのように映っ
  ていたのか、考察。
   読者に『陰獣』がどのような作品なのかを知らせる一番のものが広告。大衆紙の場合、多くの人の目
  に触れるわけだから、そこに書かれた情報が最も一般的なイメージへとつながってしまう。

○1930年代前後の犯罪報道における「江戸川乱歩」と『陰獣』
 …江戸川乱歩を犯罪学者・推理探偵のように扱い、事件に関する見解を掲載している記事。
  一方で、
   江戸川乱歩の『陰獣』が読者に犯罪者意識を芽生えさせ、事件を起こすに至ったかのような記事。
  都合よく利用されていた。

《2》 『陰獣』における「推理」

○『陰獣』というテクストについて
 …手記形式。語り手は、自分で自分のことを「道徳的に敏感」な「善人」としている。
   語り手は、必ずしも信頼できない、と思われる。

○「私」の推理は推理か?
 …信頼できない語り手である「私」の推理には、想像でしかないのでは、と思われる部分が多くある。
  果たして、「私」が行っているのは推理なのか。静子と近しくなりたい。春泥を超えたい。などの願望によ
  って、都合よく事実を組み替えているだけのようにも思える。

《3》 『陰獣』の映画化と1970年前後のミステリ・ジャンルをめぐるメディア環境

○加藤泰『江戸川乱歩の陰獣』(松竹/1977)
 …小説では寒川の視点しか提示されないが、映画では、静子の存在感がすごくある。


古い資料も多く準備していただいて、とても良い議論もできたと思います。
一人ひとりの感じ方もそれぞれで、井川先生も気にしていなかったような論点も学生側から出たりなど、とても有意義だったと思います。
特別講義のあとは、打ち上げを行いました。とても楽しかったです。

0 件のコメント:

コメントを投稿