タイトル

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6.25.2014

第8回ゼミ

2014年6月4日

 今回は『批評理論入門『フランケンシュタイン』解剖講義』(中公新書)第1部の13「間テクスト性」と14「メタフィクション」について議論を行いました。

6.13.2014

第7回ゼミ


2014/05/28

 

 第7回ゼミでは、『批評理論入門『フランケンシュタイン』解剖講義』の第1部、11・12章を取り扱いました。以下が今回のレジュメです。(レジュメはゼミ初回のガイダンスを抜いて第6回と記載してあります。また、解剖講義が解剖講座になってしまっています。申し訳ありません。)








 「反復」は、用語の意味としてはすぐに理解できましたので、主にそれによって発生する効果や意味について『フランケンシュタイン』の具体例を用いて考えました。すべて書き出すと分量がとても多くなってしまうため、一部抜粋して紹介します。(以下の内容は、レジュメ11章「反復」を読んでからご覧下さい。)

 ~反復される要素その1 “悲惨な死”という出来事~
  ・読者にハラハラドキドキと恐怖感を与える。
  ・読者に、残酷な怪物に対しては非難を、フランケンシュタインには同情をさせる。
  ・フランケンシュタインと怪物の切っても切れない因縁を表現する。
  ・生命創造を行ったにもかかわらず悲惨な死ばかりであるという皮肉を浮かび上がらせる。

 ~反復される要素その2 “フランケンシュタインと怪物の出会い”という場面~
  ・二人の呪われた関係性を象徴する。
  ・フランケンシュタインは怪物に見られている。
  ・フランケンシュタインが常に抱える恐怖を表わす。

 ~反復される要素その3 “女性”という人物~
  ・作品制作当時の社会背景(女性は従属的、受け身で、男性に庇護されるべき)。

 ~反復される要素その4 「足跡を踏む」、「新しい道を切り開く」などの言葉~
  ・二人の性格の類似性を強調する。
  ・読者に(似ている)二人を重ね合わせて見るよう誘導する。

 「反復」は、作者が意図的に物語内に埋め込んだものと、無意識的に(当時の常識を記すことで)「反復」になってしまったものがあり、区別するためには同時代の別の作者の作品も参照しなければならないとのことでした。



 「異化」の章では、私たちがある“もの”に対して予見(言語化)できてしまうと、その“もの”自体が持つ不気味さ(正体がつかめないことに対する恐怖)が消えてしまうということと、「異化」によって、自動化(常識・日常化)された“もの”に揺さぶりをかけることができるということを学びました。
 『フランケンシュタイン』以外の「異化」の具体例として、芸術作品であるマルセル・デュシャンの『泉』が挙げられました。この作品は一般的な便器に署名をしただけのもので、泉という概念の「異化」、芸術の概念(芸術とは当時、手作業によって作られたこの世で唯一の作品のみを指していた)の「異化」を行っていると言えます。



 今回もまた議論が白熱しました。ゼミが終わった後は大抵頭が働かなくなります。しかし、このように頭を限界まで使って物事を考えるからこそ、納得できた時の達成感がとてつもなく大きく感じられるのだろうと思います。次回のゼミも頑張るぞ!



6.09.2014

第6回ゼミ

2014/5/21


今回は『批評理論入門『フランケンシュタイン』解剖講義』第1部、9章と10章の内容を学びました。


この章では新しく出てきた概念の理解が議論の中心になりました。
レジュメからもっと発展的な内容になったので、今回はレジュメをあげずに授業を受けて理解したことをここでまとめたいと思います。


まず9章の「声」では、「モノローグ的」と「ポリフォニー的」というキーワードが出てきました。
最初からムズカシイ・・・


モノローグ的とは、作者の単一の意識と視点によって統一されている状態のことを指します。
「語り手」ではなく「作者」というところがポイント!
物語全体の流れや結果が、作者の理想を反映している話ということです。
作者の理想を反映した主旋律があり、その周りは補助的な働きをします。
物語を読んで作者の言いたいことや共感していた登場人物が分かるものはモノローグ的といえます。


ポリフォニー的とは、多様な考えを示す複数の意識や声が、それぞれ独自性を保ったまま互いに衝突する状態のことで、「対話的」なものも含まれます。
登場人物がそれぞれの道を歩んでおり、一つに収集することができません。
作者が理想を反映している登場人物が分からない、またはいない場合がポリフォニー的といえます。


例として挙げられていた作品が、
モノローグ的:『戦争と平和』などトルストイの作品
ポリフォニー的:『カラマーゾフの兄弟』などドストエフスキーの作品 でした。


『フランケンシュタイン』は、ウォルトン、フランケンシュタイン、怪物がそれぞれで動いており、誰か一人に収集されるわけではないことと、作者が誰に理想を反映しているのかが分からないため、ポリフォニー的といえます。


ただ、この二つの概念は完全に分離しているわけではなく、始めはポリフォニー的かと思ったら途中からモノローグ的になるものもあるので、区別が難しいと感じました。




次は10章の「イメジャリー」です。
イメジャリーとは、ある要素によって、想像力が刺激され、視覚的映像などが喚起される時に起こる、イメージ(心像)を喚起する作用のことで、働きによって「メタファー」「象徴」「アレゴリー」に分類されます。


メタファー:あることを示すために、別のものを示し、それらの間にある共通性を暗示する
象徴:特に類似性のないものを示して、連想させるものを暗示する
アレゴリー:具体的なものを通して、ある抽象的な概念を暗示し、教訓的な含みを持たせる


ここで問題になったのが「象徴」と「アレゴリー」の違いです。
これまたムズカシイ・・・


まずは比較的わかりやすいメタファーから説明します。
「風車の森」と言ったとき、この森は本物の森を指しているわけではなく、風車の群れを木の群れである「森」にたとえているもので、これをメタファーといいます。


次に象徴です。
『フランケンシュタイン』では月が母性や狂気の象徴として使われていました。
ですが、この物語が無かった場合、月=狂気または母性とすぐに結びつけるのは難しいでしょう。
つまり、象徴は物語の中でのみ暗示するものが特定できるということです。
関係のないもの、もしくは選択肢が多いものに作者が意味をつけていくのが象徴だともいえます。


最後にアレゴリーです。
アレゴリーは、キツネ=ずる賢い、コウモリ=どっちつかずなど、物語の中でなくても暗示するものが分かる言葉です。
意味が固定されており、記号化しているともいえるでしょう。
始めは象徴だったものが特定の意味を持つようになり、アレゴリーになるとも考えられます。
アレゴリーが教訓的だといわれているのは、答えが複数あるのではなく一つに導かれているからではなでしょうか。


また、このアレゴリーは、文化的・地域的に変わる可能性があります。
たとえば、さっき挙げたキツネ=ずる賢いは稲荷神社に使えている人には通じないかもしれません。
他にも、日本では醜いものとされている蛾が、タイでは美しい夜の蝶を指すそうです。
物語の中で、蛾を美しいものの暗示として使ったとき、タイではアレゴリー、日本では象徴として使われていることになります。
このように、アレゴリーと象徴は完全に分類できるできるものではなく、人によって変わるということがわかりました。


象徴とアレゴリーの定義は、学問や学者によって若干違うそうですが、今回の議論ではこのような結論でまとまりました。


ゼミは5限なので18時には終わるはずなのに気づいたら19時を過ぎている不思議。
そのくらい熱い議論を行っております(笑)
ブログもこんなに長くなるとは・・・
今後もどんどん新しい概念が出てくると思うので、頭をフル回転させて頑張りたいと思います!













6.04.2014

第5回ゼミ

2014年5月14日

 私たちのゼミでは、廣野由美子『批評理論入門『フランケンシュタイン』解剖講義』(中公新書)を用いて、文学批評について学んでいます。ゼミの内容や議論も回を追うごとに難しくなり、白熱した議論を先生に見守られながら行っています。

 今回のゼミでは、廣野由美子『批評理論入門『フランケンシュタイン』解剖講義』(中公新書)第1部の7「性格描写」と8「アイロニー」の発表を行いました。
主に議論になったことを中心にまとめたいと思います。




以下レジュメの内容(6月23日に訂正)

『批判理論入門』(第4回)

7.性格描写
☆キーワード
・キャラクター:文学作品の登場人物、登場人物の特性や行動様式のこと。

☆人物紹介
EMフォースター(18791970
 (Edward Morgan Forster) 
 イギリスの小説家。主な著作は『インドへの道』『小説の諸相』

・ジェイン・オースティン(17751817
 (Jane Austen
   イギリスの小説家。主な著作は『分別と多感』『自負と偏見』など。
 
☆語彙
・平板な人物:小説中の定型的な,時に漫画的な登場人物。
・立体的な人物:その人格,背景,動機などが十分に記述された,小説中の登
                場人物。
(Japan Knowledge Lib『ランダムハウス英和大辞典』より引用)

☆章の要点
・イギリスにおける性格描写の重要性

・フランケンシュタインの性格
 ・とどまることない探究心
 ・英雄的行為に憧れのぼせ上がりやすい気質
 ・自分の能力への自信と野心
 ・激しやすく孤立しがちな傾向。
 →これらの性格が道を外す結果となる。

・他者との比較により浮かび上がる性格
エリザベスとフランケンシュタイン
エリザベス                フランケンシュタイン
落ち着いていて集中力がある         熱中癖・激しい知識欲
自然を満ち足りた心で眺め、楽しむ      自然原因の究明への無上の喜び

クラヴァルとフランケンシュタイン
クラヴァル                               フランケンシュタイン
偉業に対する情熱
人間の行為や美徳への関心         自然科学的な秘密への関心

エリザベスとの関係からの影響

思いやりや寛容な性質           気性の激しさの抑制




8.アイロニー
☆キーワード
・アイロニー:見かけと現実との相違が認識されること、また、そこから生じる皮肉のこと。

☆語彙
・修辞:言葉を美しく巧みに用いて効果的に表現すること。また、その技術。   
    レトリック。
・直喩:「ようだ」「ごとし」「似たり」などの語を用いて、二つの事物を直接に 
    比較して示すもの。「雪のような肌」など。
・隠喩:「…のようだ」「…のごとし」などの形を用いず、そのものの特徴を直 
    接他のもので表現する方法。「金は力なり」など。
                      (『デジタル大辞泉』より引用。)

☆章の要点
・言葉のアイロニー:表面上述べられていることとは違う意味を読み取らせよ 
          うとする修辞的表現。
 EX.
 老人「何かの形で人の役に立つことができれば」
 →怪物は「人」の範疇から除外された存在であり、言葉のアイロニーが生じ 
  ている。

・状況のアイロニー:意図や予想されたことと、実際に起きていることとの間
          に相違がある場合のこと。
 EX.
 ウォルトンが姉に宛てた第三の手紙と第四の手紙の連続した配置。
 →第三の手紙と第四の手紙とでは調子が変化しており、その対照的な手紙が 
  連続して配置されることで、状況のアイロニーが生じている。




・劇的アイロニー:ある状況に関する事実と、その状況についての登場人物の
         認識が一致していないことに、読者が気づく場合に生じる
         アイロニーのこと。
 
EX.
 婚礼の日の夜のフランケンシュタインの認識のズレた行動。
 →エリザベスの身の危険を心配するべきなのだが、フランケンシュタインは 
  エリザベスから別室に行かせて目を離すという認識のズレた行動をし、
  そのことに読者が気づくことにより劇的アイロニーが生じる。

・小説の構造によるアイロニー:信頼できない語り手の使用などによって、小
               説の構造を通してアイロニーを生み出す。




7の「性格描写」では、性格がすべてを引き起こす要因になるのか、ということを考え
その際に、ルネ・ジラールの「欲望の三角形」の話がでてきました。

「欲望の三角形」とは、仮にAとBとCという人がいて、CはAを好きだとする。そしてBもAを好きになった場合に、BはCという存在が居ることでよりAに惹かれる。(CのAに対する好意を模倣して、BはAに好意を抱く。)
確かに、自分がこんな性格だと思っていても他者との関係の中で自分の意志と違う方向に行ってしまうこともあり、性格がすべてを決定するわけではない、という考えになりました。


8の「アイロニー」では隠喩(メタファー)に加え、換喩(メトニミー)について学びました。
メトニミー意味は「例えるものが例えられるものを全体とした時の一部の関係になっている。」
例として「赤ずきんちゃん」が挙げられました。
「赤ずきんちゃん」は「赤のずきん」という一部だけで「赤ずきんちゃん」全体を表しているため、メトニミーと言えます。

今回のゼミでも様々なことを議論したのですが、これからの授業を通して考えていく課題が出てきました。
それは情報の出所が多数化していれば立体的な人物になるか。」ということです。
普通は情報の出所が多ければ多いほど良いと思いますが、本当にそうなのかを考えていきたいと思います。