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3.31.2016

秋学期第13回ゼミ

                                  2015 12.17
ブログの更新をすっかり怠っていました。記録は記憶が新鮮なうちにせねばならないのに…
13回ゼミでは、4年生をゲスト講師に招き、4年生の論文集『物語として読み解く『アナと雪の女王』―物語の構造とイデオロギー―』の書評会を行いました。

担当した1章と3章のことです。↓

第1章 『アナ雪』分析の方法―文学研究からのアプローチ

論点『アナ雪』に対するメディア(世間)の解釈を無批判に受け入れてよいのか?

『アナ雪』の「物語」としての特徴を明らかにする
ここでいう「物語」とは始めと終わりがあり、ある筋によってまとめられるような言説形態を意味する。

分析方法
1物語の構造
『アナ雪』の物語を構造として捉えることで他の作品との共通点や差異を浮かび上がらせ、その物語的特徴を明らかにする。
『アナ雪』の新規性として指摘される3つ(①-③)の点に焦点を絞り、検証し、それらの新しさ妥当性を検討、メディアでの言説において語られる解釈の可能性を探る。

    原作とかけ離れた物語内容になっている点
→『アナ雪』の原作となったアンデルセンの『雪の女王』、『アナ雪』、同じくアンデルセンの『雪の女王』を原作に持つレフ・アタマーノフのアニメーション作品『雪の女王』の3作品の関連性を考察する。

    「ダブルヒロイン」物である点
→ウラジミール・ポロップが提唱した物語の構造が『アナ雪』にも存在するか検討し新規性の有無を考察する。
    ヒロイン2人が自立した女性である点
→ディズニーの他の「プリンセス作品」と『アナ雪』にマックス・リュティが掲げた「5つの要素」が存在するか検討し、『アナ雪』と他の「プリンセス作品」との質的な差異を明らかにする。

2物語のイデオロギー
『アナ雪』がどのようなイデオロギーを包含しているのかを考察する。

    エルサの「ありのまま」
ユーリー・ロトマンが提示した記号論的分析方法を用い『アナ雪』の物語世界の空間の仕切られ方、登場人物の配置を分析し、「ありのまま」がいかなる状態であるか考察する。
外部と内部で仕切られた登場人物の関係に生じる権力構造を明らかにする。
    「真実の愛」
「真実の愛」が外部、内部の空間文節に基づく登場人物の権力構造をどのように反映しているかを考察する。

3
1節 空間表微から考えるエルサの「ありのまま」
論点
 エルサは最後まで「ありのまま」でいられたか?
 『アナ雪』はエルサの「ありのまま」の自分を肯定する作品だと解釈できるのか?
 エルサの「ありのままの姿」とはどのような自己像なのか?

・ロトマンは物語の空間「内部」と「外部」からなる構造を持つとした。外部と内部は「境界」によって強固に断絶していて、登場人物が境界を越え今までいた空間とは別の空間に侵入することは容易でない。
      
・                 森、山、海


・境界線は登場人物の行動に応じて位置がずれたり、消滅したりする。
・『アナ雪』において内部は王国が支配し高度な文化が繁栄する人間の住む世界。外部は荒々しい自然が広がり、野蛮な生物や魔術的な生物の住む世界。
・エルサは魔法をつかう点、内部の人間から内部に害をもたらす存在であると認識される点から外部的存在である。
・エルサの「ありのまま」とは魔法を自由に行使できる氷の城での姿であり、内部である王国に戻ってからのエルサは真の「ありのまま」の状態とはいえない。

第2節イデオロギーとしてしての「真実の愛」
論点
 エルサが「ありのまま」でいられない物語の結末はハッピーエンドといえるのか?
 「真実の愛」とはいったい何なのか?
・「真実の愛」を語っているのは全員外部に属している。それは問題の当事者でないものが語ることによって「真実の愛」の普遍性を表すためである。
・実際に「真実の愛」を行使するのは外部の存在だけである。「真実の愛」は外部が内部のために行使する力であり、普遍性があるとはいえない。
・トロールの魔法では凍った心を溶かせない
→「真実の愛」は外部の魔法を凌駕する力であり、魔法を使う外部を制御する力である。

 自分より人のことを大切に思い、その人のために行動することとして描かれる
→自己犠牲のイデオロギー

外部の者たちが、内部の人々や共同体のために行使する力として描かれる
→外部による内部への献身が自明のこととされている。
・『アナ雪』がハッピーエンドとされる理由
①アナとエルサは内部世界で育った人なので、一度外部に出たとしても、最後に内部に戻ってくることを観客が期待するから。

②現代社会では家族は同じ場所に住むべきであるという考え方が一般的であるから。



感想
先輩方の論文は『アナと雪の女王』の見方を広げるものでした。きれいなハッピーエンドとして受け入れるだけでなく、一般的な考えに疑いを持つことで見えるものがあると思いました。また先輩方が提示した見方が正しいというわけではなく、分析方法を変えることで、違った結論が導きだされることが分かりました。




 

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